立命館大学サイエンスフォーラム 未来を変えるサイエンスとテクノロジー イベントレポート
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必要な人と場所だけに音を届ける「音のスポットライト」
スポットライトとは、必要な場所にピンポイントで光を照射するものですが、それを音でできないかについての研究を行っています。この技術は別名「オーディオスポット」と呼ばれ、同じ場所にいる複数の人に、それぞれ違った音を届けることが可能になるというものです。
例えば、「自動車の中の空間」においては、運転席にはカーナビの音声を、助手席にはオーディオの音楽をピンポイントで届けることができるようになります。この実現のためには、スポットライトの光のように直進する高い音、いわゆる超音波の利用が不可欠となります。
人の耳には聞こえない超音波に、カーナビの音声やオーディオの音楽など可聴域の音を乗せることで、特定の限られた範囲にだけ聞かせたい音を届けることができるのです。
寺院や駅などで実用化されている例も
オーディオスポットは一部で実用化されています。例えば京都の清水寺では、入口の音声ガイダンスに利用されており、寺院としての静粛さや厳格さを保ちつつ、近隣への騒音を抑える役割を担っています。より身近な例では、駅のホームでの音声案内などにも利用されています。駅の各ホームで必要とされる音声案内を、人が密集している構内であっても的確に届けているわけです。
オーディオスポットという技術には、まだまだ研究の余地が残っています。そのため、用途が音声案内に限定されているのは、あくまで現段階での話です。この技術が持つ可能性は広く、こういった実用化の例は可能性の一端にしか過ぎません。立命館大学でも、世界最先端の研究設備を使って、あらゆる分野へ応用するための研究を行っています。ぜひみなさんと一緒に未来の可能性を探っていければと思います。
騒音をシャットアウトする「音のカーテン」
オーディオスポットは、必要な音だけを聞こえるようにする技術ですが、その逆の研究も行っています。それは「アクティブノイズコントロール」と呼ばれ、騒音のような聞く必要がない音だけをシャットアウトするものです。
「音は波である」ことに着目し、その波に「逆位相の波」をぶつけることでプラスマイナス0にし、音を打ち消すのが基本的な仕組みです。例えば、一方のスピーカーから騒音を、もう一方のスピーカーから逆位相の波を出し、それぞれを調整していくと、騒音が聞こえなくなるのが分かります。
ノイズキャンセリングヘッドホンは、まさにこの原理を利用したものです。ヘッドホンの外側に付けられた超小型マイクロフォンが拾った騒音とは逆位相の波が出るスピーカーを内側のスポンジ部分に取り付けることで騒音を打ち消し、音楽だけが聞こえるように設計されています。
環境への貢献度も高い世界最先端の研究
この技術が確立されると、今まで防音壁などでしか解決できなかった騒音の問題が解決できるようになります。関西地方の一部高速道路では、壁の上方に逆位相の波が出るスピーカーを取り付け、ロードノイズが周りの住宅に拡散しないようにするアクティブノイズコントロールが試みられています。さらに研究が進んでいくと、全国規模で実用化されることになるでしょう。
立命館大学で実際に行っている研究に「消音網戸の開発」がありますが、これもアクティブノイズコントロールの原理に基づいて進められています。従来の網戸は、普通の戸と違い風を通しますが、同時に雑音などの音も通します。ですが、網戸のフレームに外側の音を拾うマイクロフォンと外の音と逆位相の音を出すスピーカーを埋め込むことで、風は通っても外の音は通らない網戸が実現する可能性があるのです。
排ガスを無害化、縁の下で地球環境を守る「触媒」
「触媒」と聞くと、日常生活では馴染みが薄いように思いますが、実は触媒は日常的に使われています。自動車はその最たる例で、エンジンの排気ガスが出る箇所には、必ず触媒が取り付けられています。この触媒の働きによって、排気ガスに含まれる有害な物質を、無害な物質に変えて排出しているのです。この「車の排ガスを無害にする触媒」は「排ガス浄化触媒」と呼ばれます。
触媒は自身が変化しないまま、反応を促進させる物質です。例えば、排ガスはガソリンの不完全燃焼によって発生しますが、この中にはNOx(窒素酸化物)やCO(一酸化炭素)など有害な物質が含まれています。これに触媒としての金属を加えると、NOxはN2(窒素)になる化学反応が促進され、COはCO2(二酸化炭素)になる化学反応が促進されます。
「排ガス浄化触媒」はこの反応を利用しており、その正体は「無数の微小な空孔を持った鉱石に金属を埋め込んだ粉体」です。これにより、有害なNOxやCOを無害なN2、CO2として排出するようにしているのです。
材料開発のために触媒メカニズムの解明が不可欠
排ガス浄化触媒だけではなく、触媒は私たちの身近な所で非常に重要な役割を果たしています。建物の壁が汚れないようにするためには光触媒が使われていますし、車の燃料電池に電気を蓄えるためにも触媒が使われています。
これからの新たな触媒の材料開発においては、触媒の反応メカニズムを原子レベルで解明することが不可欠です。
そのために触媒の化学反応を時間分解測定する手法の開発を進めています。時間分解測定とはどのようなものかを動画で紹介します(動画参照)。触媒となる材料を含む透明な3種の溶液を混ぜると、振動反応が始まって、黄色から黒そして無色へと溶液の色が変わっていくのがわかります。簡単に言えば、溶液の色が黄色のとき、黒のとき、そして無色のときにそれぞれどのような化学反応がおきているのかを測定すると、この振動反応が一体どのようなものなのかが分かるということです。世界的なレベルの研究では、ナノ秒(1秒の10億分の1)までの分解能で時間分解測定ができますので、瞬間を捉えて、触媒の状態を見ることが可能です。
触媒反応のメカニズムを明らかにして、機能が現れる本質を知る
瞬時に反応が変化していく過程、その途中段階をナノ秒(1秒の10億分の1)単位の時間分解で触媒反応のメカニズムを原子レベルで解明することが、より効率的な触媒機能の発現や副作用の低減、さらに高活性な触媒材料の開発などのために決定的な情報となります。こういった実験の成果を集めて、新たな触媒材料の開発に寄与していくのが、この研究の目的のひとつでもあります。
そのために不可欠なのが、強いX線放射光の吸収を高精細な時間分解で測定する時間分解X線吸収測定装置です。強いX線放射光を対象物質にあてて、その吸収量を測定することにより、物質の状態や分子構造まで解析することが可能になります。
立命館大学は、その強い放射光X線を発生させるシンクロトロンを備えている、日本で唯一の大学です。そしてこのような施設(立命館大学SRセンター)を備えているからこそ、ナノレベルの研究開発が可能となるのです。
世界最先端の研究設備を誇る立命館SRセンター
立命館大学SRセンターでは、強い放射光を伴うX線を生み出すシンクロトロンを使って、ナノテク分野の研究開発が積極的に行われています。また、企業との産学連携によるさまざまな研究開発も盛んです。こういった最新鋭の設備を使った研究ができるのは、立命館の大きな特長だと言えます。
基礎研究とは、未だに発見されていない事象を見出す可能性を大いに秘めた分野です。そのため、大学で研究を進める中で、世界的な発見をする可能性も十分にあり得ます。世界最先端の施設や設備を備えた環境で「自分発・立命館発の新しい発見を!」、そんな醍醐味が体験できるのです。
研究を志したきっかけ、学生時代
初めて音の研究が楽しいと感じたのは、大学4回生の時の卒業研究で「空間内の音源の位置の推定」を手掛けていたときでした。大学の低回生のときは、授業や講義の内容は受け身なものが多く、答えは調べれば正解が分かったため、あまり興味が湧きませんでした。ですが研究には確たる答えがありません。そんな状況の中で試行錯誤し、自分自身で答えを作る醍醐味を実感したのが、音の研究に関わるようになったきっかけです。
高校生のみなさんへ
今回は「音の研究」を例に出しましたが、私の所属する情報理工学部では、音以外にも様々な研究を行っています。インターフェース設計や、IT技術や通信基盤、コンピュータに知能を持たせる研究など、学科ごとに特色を持った学びを展開していますので、サイエンスに興味のある方なら、きっと自分に合う学びが見つけられるはずです。「コンピュータを使って面白いことをやってみたい!」という方には、最新鋭の設備が整った立命館大学は最適な環境だと思います。
研究を志したきっかけ、学生時代
高校の頃から、化学の授業に面白さを感じていました。中でも、非常に分かりやすく体系化された有機化学の分野に興味を惹かれていましたが、有機化学以外の分野の中には体系化されていない複雑なものもあり、もどかしさを感じていたのも事実です。そのため、現在の研究に関わるようになったベースには「化学における複雑な分野にも光を当て、より理解を深めたい」という知的好奇心があります。
高校生のみなさんへ
日本はモノづくりに長けた国で、自動車や家電、建築など多くの分野で世界に誇れる技術を持っています。目に見えるモノだけではなく、それを構成している物質そのものを作るのも重要なモノづくりです。ライフサイエンスの世紀と言われる21世紀においては、その重要性は今まで以上に大きくなっていくでしょう。私の所属する生命科学部では、このライフサイエンスの分野に関する研究が幅広く行われています。世界最先端の研究環境を誇る立命館大学で、ぜひみなさんと一緒に研究をしていきたいと思っています。

























